カーナビやスマホの経路案内など、GPSを使った機器でますます生活が便利になってますね。
でも、車のエンジンがどういう仕組で動いているかは知っていても、カーナビのGPSの仕組みについては知らないという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回はGPSの仕組みについて、どうやって位置を把握しているのかわかりやすく解説してみようと思います。
GPSの仕組みは三次元測量
GPSが人工衛星の電波を使っているということは、ほとんどの方がご存知でしょう。
GPSが発する電波には時刻情報と人工衛星の位置情報が含まれています。
電波を受信するカーナビやスマホにも時計が内蔵されていて、GPSから放射された電波がどれくらいの時間で届いたかが分かります。
電波の速度は光と同じ秒速約30万キロメートルなので、電波が届いた時間(秒)✕30万キロでカーナビやスマホから人工衛星までの距離が分かります。
でも、その距離にある地球上の地点は無数にありますから、一つの人工衛星からの距離がわかっただけでは位置までは特定できませんね。
そこで複数の人工衛星が必要になってくるわけですが、まず平面(二次元)の場合を考えてみましょう。
二次元の場合
(引用:https://www.youtube.com/watch?v=3oYW8iyQtgc&t=238s)
上記において、衛星Aと衛星Bからの距離をそれぞれr1、r2とすると、受診者の位置は衛星Aから半径r1で、衛星Bから半径r2で円を書いたときに2つの円が交差する地点になります。
(実際には交点は反対側にもう一つありますが、ここでは便宜上無視します。)
この方法は平面的な地図で、例えば東京から◯kmで名古屋から◯kmの地点、というような場合には有効な方法です。
でも、人工衛星は上空にあるため立体的な計測方法をしなければならないことになります。
つまり、三次元での計測が必要なのです。
三次元の場合
(引用:https://www.youtube.com/watch?v=3oYW8iyQtgc&t=238s)
上図で、上空にある衛星Aからの距離r1、衛星Bからの距離r2,衛星Cからの距離r3を同時に満たす位置は一つだけで、そこが受信者の位置になるというわけです。
これが三次元測量です。
このように、GPSを使った位置検索には人工衛星が最低でも3基が必要になります。
しかし、人工衛星に搭載されている時計は原子時計で、その誤差は1万年から10万年に1秒です。(さらに高精度のものもあります。)
それに比べ、カーナビやスマホに搭載されているのはクオーツ時計で、その誤差は精度の高いものでも誤差は1年で数秒であり、人工衛星が発した電波の処理をするのにどうしてもズレが生じてしまいます。
そのため、そのズレを修正するために実際には4基目の衛星を使ってズレを修正しています。
GPSの誤差はどれくらい?
カーナビが発売され始めた頃、自分の車は海岸沿いの道路を走っているのに、カーナビ上では海の上を走っているように表示されるようなこともありました。
GPSというのはもともとアメリカ国防総省の軍事衛星を使った「Global Positioninng System」という衛星測位システムを使っていました。
当時、アメリカ国防総省はGPSの精度を意図的に落とすSA(Selective Availability)というポリシーで運用し、その保証精度は100mでした。
実際には30mくらいの精度だったそうですが、30mも違えば車が海の上を走っているということもありえますね。
今ではそのSAが解除され、その頃に比べて精度は向上していますがそれでも誤差は生じます。
GPSに誤差を生じさせる原因は何なのでしょうか?
GPSの誤差の原因と誤差の範囲
GPSに誤差が生じる原因はいろいろあります。
GPSと受信機の時計誤差
いくら正確な時計を搭載して、しかも誤差を修正していても誤差はなくなりません。
1秒間に30万キロも進む電波の世界では、僅かな時間の誤差も距離にすると数メートル単位の誤差になってしまいます。
時計の誤差による距離の誤差は1~2メートルと予測されています。
衛星の位置情報の誤差
衛星がどこにいるかという情報が間違っていれば、衛星からの距離も当然間違って計算されます。
衛星の位置情報の誤差による距離の誤差は、時計の誤差よりも少し大きくて1~4メートルと予測されています。
大気の影響
人工衛星から発射された電波は地球上の大気や電離層を通って受信機まで到達します。
従って大気中の水蒸気や電離層の状態によって電波の速度が遅くなり、それぞれ大気遅延、電離層遅延と呼ばれていて、その誤差は大きいときでは20メートルに達することもあります。
マルチパス
マルチパスとは人工衛星から発射された電波が受信機に直接届くだけではなく、高い建物などに反射して届くことを言います。
そうなると人工衛星から受信機までの距離が長く計測されたり、二重に計測されたりします。
マルチパスによる距離の誤差は数メートルと言われています。
このようにGPSの誤差は常に存在し、その要因は複雑に絡み合っています。
それでもカーナビやスマホが正確な現在位置を示すのは、地図データを使って位置を割り出す「マップマッチング」という機能が搭載されているからです。
さらに高度なカーナビでは自車位置特定システムを搭載しているものもあり、トンネル内や地下駐車場など人工衛星からの電波が届かないところでも正確な位置を表示してくれるわけです。
受信機器によっても誤差の範囲は変化するので、GPSの誤差はどれくらいか?ということは一概には決められないのです。
終わりに
上にも書きましたがGPSというのはアメリカ国防総省のシステムの固有名称で、人工衛星を使った位置測定システムはGNSS(Global Navigation Satelite System)・全球測位衛星システムと呼びます。
世界中にはその他にも次のようなGNSSがあります。
- アメリカ・・・・GPS(Global Positioninng System)
- ロシア・・・・・GLONASS(Global Navigation Satelite System)
- ヨーロッパ・・・Galileo
- 中国・・・・・・北斗
日本では2017年にみちびき4号の打ち上げに成功し、QZSS(Quasi-Zenith Satelite System)という名称で運用されています。
ただ、GPSやGLONASSなどが運用対象を全世界をしているのに対し、QZSSの衛星は日本上空付近を周回する衛星のため、運用できるのは日本周辺とアジア地域に限られます。
それでも、日本のような資源を持たない小さな国が位置特定システムを独自に持つなんてちょっぴり誇らしいですね。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。