日本人は宗教になじみ薄いんですが、世界で一番信者が多いキリスト教のこともよく分かりませんね。
カトリックやプロテスタントという言葉はよく耳にするんですけど、宗派のようなものかとは思いますが、その違いもよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
ここでは、カトリックとプロテスタントの違いをわかりやすく説明します。
カトリックとプロテスタントの違い
プロテスタントはカトリックから派生した宗派
カトリックとプロテスタントの違いをみる前に、キリスト教の歴史についてみてみましょう。
キリスト教は今から2000年ほど前に誕生しました。
イエス・キリストが磔(はりつけ)の刑にかけられてその3日後に復活し、召天したあとキリストの直弟子たちが教会を造ってキリストの教えを広めていったのが始まりとされています。
直弟子のなかにキリストの使徒のひとりのペドロという人物がおり、現在のカトリック教会では初代ローマ教皇はそのペドロということになっていて、カトリックの歴史もここから始まったわけです。
(ローマ教皇とはカトリック教会の最高位の地位についている人のことです。また、ここで言う教会とは建物の教会ではなく、文字通りに「教える会」という組織で使うことが多いです。)
その後キリスト教はローマ帝国の国教となりますが、ローマ帝国が東西に分裂したことにより東と西ではキリスト教の差異が徐々に大きくなっていき、西ローマ帝国の滅亡を機にキリスト教会もふたつに分裂してしまいます。
西方に別れたのが現在のローマカトリック教会で、東方に別れたのがギリシャ正教です。(ギリシャ正教についてのことはここでは割愛します。)
ローマカトリック教会は善行主義です。
ボランティア活動や恵まれない人への施しはもちろん、当時のローマカトリック教会ではローマ教皇への寄付も善行とみなされていました。
カトリック教会は悪業を行ってもそれを買えば赦されるという贖宥状(しょくゆうじょう・免罪符)を発行し、財政を豊かにしていました。
贖宥状を買うことがローマ教皇への寄付になるわけです。
また、聖職者が大きな権力を持ったことで不正や汚職も相次ぎ、カトリック教会への批判も高まっていきます。
このようなローマカトリック教会の現状に異議を唱えたのがマルティン・ルターで、悪業をなしても贖宥状を買えば赦されるというのはおかしい、聖職にあるものが堕落していると非難し、カトリック教会の改革を進めようとします。
これに呼応して当時の聖職者の絶対的な権力に反発していた人たちもルターの主張に賛同し、新しい宗派が生まれてきますが、これがプロテスタントです。
そして、ローマカトリック教会の体制を革新しようと行われた運動は宗教的なものだけにとどまらず、政治的、社会的にも及び、宗教革命と呼ばれています。
このように、プロテスタントはカトリックから派生した宗派であるということができます。
カトリックとプロテスタントの教義の違い
カトリックとプロテスタントの違いはその教義に現れています。
善行と信仰
カトリックでは、どんな罪人も善行を積めば赦されると説き、その善行には寄付も含まれます。
寄付が集まるため、宗教施設であるカトリックの教会は豪華できらびやかなものになっています。
これに対してプロテスタントでは罪人でも信仰によって救われると考えます。
これはキリスト教の信者は誰でも神の前では祭司であるというマルティン・ルターの考え(万人祭司)に基づいていて、祭司と一般信者とをきっちり区別するカトリックの考えとは相容れません。
カトリックの教会は質素なものになっています。
教会と聖書
カトリックもプロテスタントもどちらも神を第一と考え、経典も聖書で同じです。
しかし、神の次に位置するのはカトリックでは教会で、プロテスタントは聖書というスタンスです。
カトリックは、聖書を解釈して伝導するのは教会なので、教会が神の次に重要であると考えます。
一方のプロテスタントは、聖書は神の言葉なので教会よりも重要であると考えます。
人が関わるかどうかの問題ですね。
一生涯独身の神父、結婚が許される牧師
カトリック教会では祭司のことを神父と呼びます。
英語では一般にFatherであり、日本語でも英語でもその名が示す通りに男性しか神父にはなれず、結婚もできません。
一方、プロテスタントでは祭司(万人祭司主義のため、少し意味は違いますが)のことを牧師と呼び、結婚も許されていて女性でも牧師になれます。
また、カトリックでは基本的に結婚は神との神聖な契約であり離婚は許されていませんが、実際には離婚する人もいます。
ただ、カトリック信者で離婚した人は聖体拝領(キリストの血と肉とされるぶどう酒とパンを食する儀式)を受けることができません。
一方、プロテスタントは離婚も認められています。
まとめ
カトリックとプロテスタントの違い
- カトリックから派生したのがプロテスタント
- カトリックは善行を、プロテスタントは信仰を大切にする
- 神の次に重要なのは、カトリックは教会、プロテスタントは聖書
- カトリックの神父は結婚できないが、プロテスタントの牧師は結婚できる
私達日本人は「カトリックもプロテスタントも同じキリスト教なんだから、そんなに変わらないのじゃないの?」と思いがちです。
でも、キリスト教徒にとって信仰は生活の深いところに根ざしていて、カトリックとプロテスタントでは違う宗教と言えるほどの違いがあります。
人との付き合いが国際的になった今、関わり合う人がキリスト教徒の場合にはどの宗派に属しているかによっても異なる対応をとらなければいけないことがあるかもしれません。
世界で一番教徒が多いキリスト教のことを理解しておくのも大切なのかもしれませんね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。