日本は世界で唯一の被爆国であり、毎年8月6日と8月9日が原爆の日(原爆記念日)とされ広島市と長崎市で原爆犠牲者を慰霊するとともに、平和を祈念する式典が行なわれます。
原爆投下で一瞬にして命を落とした人や後遺症を抱える被爆者のことを考えると、「何で民間人が」と、やりきれない気持ちになります。
広島や長崎に投下されたのは原爆(原子爆弾)だったのですが、その後水爆(水素爆弾)というものも開発されました。
原爆も水爆もどちらも核兵器の範疇に分類されますが、どのように違うのでしょうか?
原爆と水爆の違い
簡単に言ってしまうと、原爆と水爆の違いはエネルギーを取り出す方法の違いということになります。
爆弾の破壊力はそのエネルギーによって決まります。
手榴弾や戦車の大砲などは爆薬が燃えるときにエネルギーが発生して熱や爆風を生み出します。
原爆は核分裂で、水爆は核融合によって莫大なエネルギーを取り出しています。
原爆のしくみ
物質を構成する原子は原子核と電子によって構成され、原子核が分裂するときに莫大なエネルギーを放出します。
このエネルギーを軍事目的に使ったのが原爆で、平和目的で利用するのが原発です。
安定して存在している原子核を崩壊させるのはたいへん困難なことですが、物理学者のニールス・ボーアがウランの同位体であるU-235が最も崩壊しやすいことを発見。
核分裂が連続して起こる連鎖反応も自然界ではU-235しか存在しません。
U-235が核分裂すると重量が少しだけ軽くなり、その分がエネルギーとなって放出されるわけです。
少しだけ軽くなった分のエネルギーでもその熱量はものすごく、同じ重さのものと比べると石油の約230万倍ものエネルギーを放出します。
そして核分裂によってエネルギーを放出したU-235は放射能を持つようになってしまいます。
ここに原爆の破壊力だけでなない怖さがあります。
原発では核分裂反応を制御していますが、この制御ができなくなると、福島第一原発のように放射能が外部に漏れだしてしまうことになってしまいます。
水爆のしくみ
水爆は核分裂ではなく核融合によってエネルギーを作っています。
私たちの身近なところで核融合でエネルギーを発生させているものは太陽です。
太陽がなければ地球上の全生物は生きていけません。
太陽は地球上の生命体を維持するだけのエネルギーを地上にもたらしてくれているわけです。
太陽内部では軽水素の核同士が融合し合い莫大なエネルギーを放出しています。
(軽水素は水素の同位体で、陽子1個と電子1個で構成され、地球上の水素のなかで一番多いものです。一般に私たちが水素と呼んでいるもの。)
太陽は巨大であり、内部は高圧と高温という環境です。
水素が核融合を起こすためにはこの高圧と高熱が絶対条件になります。
水素が核融合を起こすのに必要な温度は一億℃、圧力は一千億気圧だそうです。
地球上では通常とてもそんな環境は作れません。
そこで目をつけたのが原子爆弾のチカラです。
原子爆弾を爆破させたときに起こる高圧と高温を利用して水素の核融合させたものが水爆(水素爆弾)です。
(このときに使う水素は重水素です。)
つまり原爆が水爆の起爆剤になっているわけで、水爆のあるところには必ず原爆もあり水爆が爆発すれば放射能も飛散します。
水爆の威力は原爆の数百倍とも言われています。
世界で最初に行なわれた水爆実験の出力は10.4メガトン(1,040キロトン)ということでした。
広島に落とされた原爆が13キロトンでしたから、単純計算でなんと800倍の破壊力となります。
こんなものが上空で数発炸裂したら日本など吹き飛んでしまうでしょう。
現在世界には核保有国が10ほどもありその保有するほとんどが水爆と考えられています。
そして前世界にある核兵器の数は約2万発以上。
抑止力としての数としては異常な多さです。
放射能汚染がない原爆を利用しない水爆(きれいな水爆)も研究されていますが、まだ実用化には至っていません。
まとめ
原爆はウランの同位体・U-235の核分裂を利用した爆弾
水爆は水素の同位体・重水素の核融合を利用した爆弾
水爆の重水素の核融合を引き起こすのに原爆を使っている
水爆の威力は原爆の数百倍
人類の知識の発達により、間違った方向に進んでしまった結果が
原爆と水爆の開発であったと思います。
今度はその知識をさらに進化させ、核融合を利用して
クリーンな方法でエネルギーが取り出せるようになれば
いつまであるのか分からないガゾリンに代わるエネルギーになります。
そしてその原料も海水に含まれるので
無尽蔵にあると言えます。
兵器として最初に利用されてしまった核融合反応。
まだその実用化には様々な困難がありそうですが
未来のクリーンエネルギーとして早く実用化されるといいですね。
そうなれば資源小国の日本も
もっともっと豊かになり、世界のリーダーになれることでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。