皆さんが住んでいる地域でも、ゴミは可燃ごみも不燃ごみも決められた日に集積所に出していると思います。
そうすれば自治体のゴミ収集車が持っていって処分してくれますね。
不要になったスプレー缶は不燃ごみなんですけど、廃棄するときは缶に穴をあけて中身を出し切ってから廃棄していませんか。
でも、これってすごく危険なんです。
ここではスプレー缶の穴あけが危険な理由と、穴をあけなければいけないときはどうしたらいいのかなどについて解説しています。
スプレー缶の穴あけ廃棄が危険な理由
スプレー缶の中身
殺虫剤や整髪スプレーなどスプレー缶の製品は身の回りにはたくさんありますね。
噴射ボタンを押すだけでシューッと出てくるので、中はきっと高圧なんだろうなと想像ができます。
スプレー缶の中を高圧にしているのがLPGなどの可燃性ガスなんです。
スプレー缶の中の可燃性ガスは高い圧力をかけられ、液体の状態となって殺虫剤などと一緒に閉じ込められています。
中学校で習ったと思うんですけど(小学校だったかな)、液体のものが気化すると体積はべらぼうに増えます(LPGは気化すると約250倍もの体積になります)。
スプレー缶の内部は可燃性ガスの一部が気化して高圧状態になっています。
そのために噴射ボタンを押すと激しい勢いで殺虫剤が飛び出してくるというわけです。
スプレー缶の中身が外に出ると内部の圧力が下がります。
そうすると、同時にそれを補うようにして液化していた可燃性ガスの一部がさらに気化して内部はまた高圧状態なります。
このようにして、液化している可燃性ガスがなくなるまでは高圧を保ち続け、スプレーを出し続けることができるんです。
引火の可能性
殺虫剤などの中身が全て出てしまっても、可燃性ガスはまだ残っていることがあるため、スプレー缶を廃棄するときには穴をあけて可燃性ガスを抜いて(ガス抜き)から廃棄する必要があります。
スプレー缶に穴をあけて中身を出そうとするとき、周りに火の気があると勢いよく吹き出した可燃性ガスに引火して火事や爆発につながる恐れがあります。
中身が残っていれば一緒に出てくるので、その中身が有害物だったら身体にかかったときに思わぬ事故にもなりかねません。
また、火の気がないからといって油断はできません。
硬いスチール製のスプレー缶に穴を空けるとき、釘とかなづちを使うこともあるかと思います。
かなづちで釘を叩いたときに釘とスチール缶の摩擦で火花が飛び、その火花に引火することも考えられますので注意が必要です。
スプレー缶の穴あけ どうすればいい?
お住まいの自治体によっては、スプレー缶を廃棄する際は穴をあけなければいけないという自治体もあるでしょう。
下の画像は私が住んでいる自治体の家庭ごみの出し方についてのパンフレットの一部ですが、スプレー缶は穴をあけて出すことになっています。
スプレー缶に安全に穴をあけるときの注意点は次の4点です。
- 中身を出し切る(中身が飛散しないようテイッシュなどに吹き付ける)
- 火気のない風通しの良い屋外で風下に向いて行う
- 専用器具を使って行う
- 穴をあけたあと、付近に火気を近づけない
最近のスプレー缶にはガス抜き装置がついているものがあるので、それを利用してもいいでしょう。
ガス抜き装置を使ってガスを抜いた場合、穴をあけなくていいかどうかは自治体に確認してください。
ガス抜きの専用器具はAmazonなどで購入できます。
ガス抜き器具を使用する場合に、急激にショックを与えると火花が飛ぶ可能性がありますので、じんわりと力をかけるようにしましょう。
なぜ穴あけが必要なのか?
家庭ごみの収集にはエンジンのパワーでごみを圧縮する機能がついているパッカー車が使われます。
スプレー缶に可燃性ガスが残っていると、回転板でごみを中に押し込む際に破裂して可燃性ガスが漏れ出し、回転板の動作で発生した火花に引火するという危険性があります。
実際にスプレー缶の可燃性ガスが原因と思われるパッカー車の火災も多く発生しています。
高価なパッカー車がスプレー缶の可燃性ガスが原因で燃えてしまっては自治体もたまったものではありません。
また、不燃ごみの最終処分場での爆発事故も頻繁に起きています。
このような事故をなくすために、スプレー缶を廃棄するときには穴をあけて可燃性ガスを完全に抜くこととしているわけです。
スプレー缶についているガス抜き装置を使って可燃性ガスが完全に抜けていればいいと思うんですが、自治体の方針には従ったほうがいいですね。
環境省の見解は?
スプレー缶の穴あけ時に起こる事故について、環境省の「適正処理困難な廃棄物の処理体制の整備について(平成27年6月25日付け)」の通達では次のようになっています。
エアゾール缶やカセットボンベを廃棄する際、穴開けをしない方向が望ましいと考える
この通達により、それまで「スプレー缶は穴をあけてから廃棄する」としていた自治体が「穴をあけないで廃棄」に方針を変えたというケースが増えています。
全国に20ある政令指定都市でスプレー缶を廃棄するときに穴をあけることとしているのは仙台市、相模原市、神戸市、岡山市の四市だけです(2019年1月現在)。
「穴あけ必要」から「穴あけ不要」にシフトするにはコストがかかります。
人口が多くて税収も多い自治体はそのシフトも早くできるのでしょうが、私が住んでいる自治体のようなところもそのうち穴あけ不要になっていくのだと思います。
そして穴開け不要としているところでも、「中身は出し切ってから廃棄」が基本です。
しかしスプレーする機構が壊れた、ガスが先に全部出てしまって内容物が残ってしまったなど、中身が出せないときもあります。
そんなときに缶に穴をあけることは危険ですので、消防署や自治体に問い合わせるようにしましょう。
まとめ
スプレー缶の穴あけは火災や事故の危険性あり
スプレー缶に穴をあけるときの注意点
- 中身を出し切る
- 火気のない風通しの良い屋外で風下に向いて行う
- 専用器具を使って行う
- 穴をあけたあと、付近に火気を近づけない
中身を出しきれないときは消防署や自治体に確認する
かっては可燃性ガスの代わりにフロンという物質が使われていましたが、環境保護の観点からフロンは使用禁止になりました。
それではスプレー缶の内部を高圧にするために、可燃性ガスの代わりになるものはないのかというと、いまのところ見つかっていません。
空気中の窒素や酸素は常温では液体にならないんです。
スプレー缶は手軽に使えてたいへん便利なので、どの家庭にも1本や2本はあるでしょう。
ですが、廃棄するときには細心の注意を払って棄てるようにしましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。