最近ではテレビのグルメ番組が増え、リポーターやタレントが「うまい」とか「おいしい」を連発しているのをよく見ます。
「うまい」も「おいしい」も料理の味のことを言っているんですけど、この二つは何が違い、どう使い分けたらいいんでしょうか。
「うまい」と「おいしい」の違い
語感上の違い
なんとなくのイメージとして、「美味しい」は「うまい」の上品な言い方という感じがしますね。
辞書ではどんなふうに書かれているんでしょうか。
うまい
- 飲食物の味が良い。美味である。
- 技術・技量などがすぐれている。上手だ。巧みだ。
- 自分にとって都合がよい。
- おろかだ。あさはかだ。
- 《現代では「うまい」は「おいしい」に比べ、ぞんざいな感じを与える語とされる》
美味しい
- 物の味がよい。
- 都合が良い。利益になる。好ましい。
参照:三省堂 大辞林 weblio辞書
飲食物の味に関してという意味ならどちらも同じですね。
でも現代では「うまい」は「おいしい」に比べ、ぞんざいな感じを与える語とされる、とも書かれていて、やはり「美味しい」は「うまい」よりも上品な言い方になります。
それではなぜそうなったんでしょう?
goo辞書によると
「おいしい」は女房詞系で、もっぱら味がよいの意の女性語として成長した言葉。
とあります。
女房詞(にょうぼうことば)とは、室町時代に宮中で働いていた女房たちによって使われ始めた言葉で、それが徐々に一般の女性にも使われるようになっていったんです。
普段よく使っている言葉の「おかず」や「おひや」、「おでん」なんかも女房詞なんですよ。
「おいしい」は味が良いという意味の女房詞の「いしい」に接頭語の「お」をつけたもので、宮中の女房が使っていた言葉をさらに丁寧にしたものだそうです。
宮中で使われていた言葉=上品な言葉ということで「おいしい」は「うまい」よりも上品な言葉とされているわけです。
地域性
国立国語研究所が調査した結果によると、「うまい」という言葉は日本全国で使われていますが、「おいしい」という言葉は東北より北の地域ではほどんど使われていません。
(国立国語研究所の日本言語地図はコチラ)
実際に東北に住む人のなかには「おいしい」という言葉は馴染みが薄く、あまり使いたくないという人もいます。
これは幕府があった京都や江戸から離れていたからという理由もあるかもしれませんが、「おいしい」は「ちょっと気取った言い方」という認識があるからでしょう。
逆に東京では女の人が「うまい」というのを嫌う人もいます。
これは「おいしい」が「うまい」の上品な言い方ではなく、「うまい」が「おいしい」の下品な言い方とされているかららしいです。
味の良さを伝えるのに「おいしい」か「うまい」のどちらを標準とするのかによって地域で差があると言えますね。
うまいと美味しいの使い分け
何かを無性に食べたり飲んだりしたくなるときってありませんか。
そしてそれを食べられたときには「おいしい」ではなくて「うまい」と思います。
このように「うまい」という言葉を使うときには、そのものズバリの味や感覚に対してそのときの感情が直感的にストレートに現れていると思うんです。
ジョギングをしたあとの一杯のスポーツドリンクはまさに「うまい」って感じですね。
これに対して、「おいしい」という言葉を使うときには味もさることながら、食べたときのシチュエーションやその料理にかけられた手間などいろんなことが頭をよぎっています。
直感的なものではなくて、やんわりと感じる味といったところでしょう。
結婚披露宴でのフレンチのフルコースは「うまい」ではなくて「おいしい」がピッタリきます。
このように、味の良さを直感的・感情的に表現するときには「うまい」、その食べ物に関するシチュエーションも総合的に表現するときには「おいしい」と使い分けるのがいいのだと思います。
ただ「うまい」を下品だと思っている人もいるようなので、女性はあまり「うまい」を連発するのはよくないのかもしれません。
まとめ
- 「おいしい」は「うまい」の上品な表現である
- 「おいしい」は東北地方以北ではあまり使われない
- 「うまい」は感情をストレートに出したいときに使う
- 「おいしい」は味の良さをじんわりと表現したいときに使う
- 女性は「うまい」を連発しないほうが良い
私は中部地方に住んでいるんですけど、女性も「うまい」や「おいしい」はよく使っています。
少しかしこまった席ではやはり「おいしい」が使われることが多いように思いますが、男性はあまり「おいしい」は使いませんね。
男性が使うと軟弱な気がするからです。
でも、これも時と場合によると思います。
天皇陛下や皇族のかたが「うまい」と言うのはおかしいでしょう。
言葉は時代とともに変わっていきます。
「うまい」と同じような意味の「やばい」という言葉が広辞苑に載る時代ですからね。
だけど、もともとあった言葉の意味も忘れずに使い分けたいと思います。
ちなみに私は新語は嫌いです。どうでもいいことですが・・・。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。